大深度地下の使用の認可に係る公述人としての意見
川原成雄
私は、青梅街道インター地域の地権者及び元関町一丁目町会外環対策委員会のメンバーとして、本件事業についての大深度地下の使用認可に反対の意見を述べます。
最初に、私たちが所属する元関町一丁目町会と外環対策委員会について説明をしておきます。元関町一丁目町会は、青梅街道インター予定地域がすっぽりと入るエリアの町会であり、須山直哉町会長をはじめとして、外環道路計画については、高架式計画の時期から町会内に「外環対策委員会」を設置してインター反対を取り組んできました。石原都知事が大深度地下方式を打ち出して以降、青梅街道インター計画及び「外環の2」地上部道路反対を申し合わせ、継続的に活動しています。
したがって私の陳述は、私自身の個人的意見というレベルを越えて、町会及び地権者がこの10年間行政とのやりとりを通した事実にふまえたものであり、地域の声の代表としてあることをしっかりと受けとめていただきたい。
以下、6点にわたって理由を述べます。
(1)青梅街道インターチェンジ予定地では、住民との合意形成が全くないまま計画が一方的に進められてきた。つまり、手続き上重大な瑕疵が存在する
他の地域では行われた「地域課題検討会」は、私たちの地域においては開催されていません。それは、私たちの町会が青梅街道インター建設について白紙撤回を求めてきたからです。
国交省が示す「進め方」の中では、「地域課題検討会」は計画段階で実施されるべきものとされており、それを経て事業実施段階に入るとされています。行政自らが定めた手続きがおこなわれていない状況のもとで、2009年12月18日に当該地域での事業説明会を強行しました。これは極めて重大な問題です。
事業説明会前の2009年1月19日に国交省・東京都より発表された、外環道「対応の方針(素案)」では、「青梅街道インターチェンジ周辺地域における地域PIについて」として、「青梅街道インターチェンジ周辺につきましては、PIの一つである地域課題検討会は開催されておりませんが、これまでのオープンハウスや意見を聴く会等で頂いた意見を基に、……課題に対する国や都の考え方を『対応の方針(素案)』としてまとめました」とある。
こんなデタラメは許されません。国交省が一方的に私たちの「地域の課題」の洗い出しも整理もできるはずもないのです。必要不可欠な手続きであるはずの「地域課題検討会」を行わずに「対応の方針」をまとめることは異常極まりないものです。
したがって、「対応の方針(素案)」に対して、私たちの地元からは「『対応の方針』から青梅街道インターについては削除すべき」との意見が1310通も出されています。これは、青梅街道インターに関わる意見書総数の96.3%にあたる圧倒的な意見です。にもかかわらず、国交省・東京都は「対応の方針」のなかで何も答えなかったのです。
さらに、事業説明会で「測量、地質調査、井戸調査の実施」を打ち出されましたが、これについても町会として「測量や井戸調査などの名目で町会内に立ち入らないこと」を国交省に申し入れた結果、当時の外環国道事務所の篠田課長は町会内での井戸調査、ボーリング調査などはやらないと約束し、今に至るもこの地域では一切行われていません。
しかし、にもかかわらず、2011年1月26日に「基本設計及び用地に関する説明会」、そして2013年8月25−26日には「道路区域決定及び区分地上権設定に関する説明会」が強行され、道路区域決定が行われました。いずれについても、町会は事前に住民との合意のない説明会開催は中止すべきと文書で申し入れています。
「地域課題検討会」も井戸調査、ボーリング調査なども外環計画推進の必須の手続きであるはずであるにも関わらず、それらをスルーして大深度地下の使用申請を行うことは不当極まりなく、重大な瑕疵があるということです。
(2)合理性もなく練馬区の意向のみでの青梅街道インター設置を組み込んだ大深度地下申請は行うべきではない
外環道の地下化に際して、当初は行政も「ノーインター」の方向でした。2002年11月のPI有識者委員会最終提言では、「外環道はインターなし地下案を検討の基本に」としています。ところが、2003年1月に当時の岩波練馬区長が7区市首長会議にて、「青梅街道インターを建設しないのであれば、外環道本線の建設には協力できない」と表明しました。このことにより、2003年3月の「東京外かく環状道路(関越道〜東名高速間)に関する方針」にいきなり、「インターチェンジについては、今後、地元の意向等を踏まえながら、設置の有無について検討する。その際、設置要望のあった青梅街道インターチェンジについては、さらに地元の意向を把握していく。」と挿入されました。
そして2005年9月の国と都「東京外かく環状道路(関越道〜東名高速間)についての考え方」発表、10月の「計画概念図」発表で、青梅街道インター設置方針が打ち出されたのです。
しかし、お隣の杉並区では2003年5月に区が実施した住民アンケート結果にふまえて「インターチェンジを善福寺地区に設置することについては、生活環境・自然環境・教育環境・景観等への影響が広範囲にわたって危惧されるため」と報告がまとめられ、インターは付けないとなりました。当時の山田杉並区長は、都知事に対し、「ハーフインターでも、交通渋滞や地下水脈への影響はフルインターの時と同様、避けられず、インターを設置しなくても本線だけで渋滞解消効果はある」としてインター設置の見直しを求めました。
一方、練馬区行政は、2006年8月に区内1万3千人を対象に外環に関するアンケートを実施しましたが、これは杉並区における実施と全く異なり、青梅街道インター予定地周辺全戸を対象としていない点で、実施方法に問題があります。地元住民の意思はここには反映されていません。
こうして、青梅街道インターは練馬区側のみの「ハーフインター」とする案となりました。
杉並区があげた反対理由は、そのまま青梅街道をはさんだ地続きの地域である練馬区関町にも適用されます。同じく地域住民が反対していながら、区長の意向の差だけでもって、練馬区側のみに付く計画とはあまりにもいびつであり、一片の合理性も正義性も存在しません。欠陥インターと言うべきものです。
この青梅街道ハーフインター計画を組み込んだ今回の大深度地下の使用認可申請を認めることはできません。
(3)事業費1000億円も巨費を費やして、半分だけのインターには全く意味がありません。
片側だけのインターですから、インターから中央道や東名高速へは行くことができないため、練馬区民の利便性はほとんどありません。国の財政破綻のなか、地元住民が望まないインターを、1000億円もの巨額の金もかけて建設することが必要でしょうか?これは地元住民100人に聞けば100人おかしいと答えます。
そしてインターの効果がどれほどあるのかということです。
国交省は、青梅街道インターチェンジ整備の理由として、設置した場合、しない場合の比較評価を公表しています(平成17年公表・交通量は平成11年ベース)。
1.環状8号線の交通量の減少/1日=インターを設置しない場合、6.4万台→5万台(外環本線開通による減少)。設置した場合6.4万台→4.9万台
2.大泉インターの利用交通量の減少/1日=インターを設置しない場合4万台→2・8万台(外環本線開通による減少)。設置した場合4万台→2.3万台。
国側の試算でも青梅街道インターの「効果」は極めて限定的なものです。私たちの住む練馬区の年間予算は約2000億円です。その半分にもあたる巨費を投ずるだけの意味や効果がある事業とは到底思えません。不要な公共事業であるということです。
(4)青梅街道インター建設が与える地域住民への致命的な影響である
インター建設によって、約100戸の住宅が立ち退きとなり、大気汚染、騒音振動、コミュニティーの分断などにより周辺の住環境は著しく悪化します。ここでは、地域に対する影響を7点述べます。 1.大気汚染
換気塔から集中排気される大気は、インター設置前よりNO2の濃度は現在の倍近くなり、大気の状態が悪化することは明らかです。
浮遊粒子物質(SPM)に関しても、最近問題となっているPM2.5は、換気塔のフィルターで除去することはできません。
インターチェンジのために開けられる穴から直接出てくる大気はフィルターを通していないので、換気塔から出てくるものよりさらに濃度が高くなる。
この先ながくこの地に住めば、肺がん、喘息などになる可能性が高まります。
練馬区は、2013年3月31日現在、ぜん息など大気汚染医療費助成認定患者数が、23区内で大田区・世田谷区・江戸川区に次いでワースト4にあたる4,543人にのぼっております。今でさえこのように劣悪な大気汚染の状況が続いているなか、さらなる環境悪化をもたらす青梅街道インター建設には断固反対です。
2.騒音・振動・低周波音
完成後は24時間365日絶えることのない騒音、振動、低周波音に悩まされることが強制されます。
3.地下水の汚染と地盤沈下
トンネル掘削には地盤凝固剤が使用され、地下水汚染の心配があります。
青梅街道インターは開削部分となるので土留め壁が造られ、浅層地下水の流れが遮断されることになるので地盤沈下が起こる可能性がある。
4.地域の分断
青梅街道インターは幅60メートル以上あり、元関町一丁目町会を斜めに横切る形で設置されるので地域が分断され、成熟したコミュニティが破壊されます。生活道路が分断され、いままでのように自由に行き来ができなくなり、買い物や駅・バス停への道筋が大幅に変わり、遠回りを余儀なくされるなど生活面での不便さが増すことになります。これから高齢社会にどんどんなる中で極めて深刻です。また児童にとっては、学区域が分断され、通学路の一部が消失するなど、影響が大きいです。
5.生活道路への車の進入
インターを利用する多くの自動車が周辺地域の生活道路に進入し、安全性が低下し、交通事故の増加も懸念される。
6.工事車両の流入
青梅街道インターの問題は建設後だけではありません。工事中、何年にも亘って工事車両が1日300台出入りすることになります。粉塵や工事車両からのNO2やSPMの値、更に騒音・振動の値も完成後の値より高く、毎日毎日騒音やほこりに悩まされることになる。特に児童通学が大変危険となります。地域の子どもたちの生命や生活に重大な影響を及ぼすことが懸念されます。
7.練馬及び杉並の豊かな生態系の破壊
さらに、練馬・杉並の広域の住民に貴重な緑地帯として親しまれてきた都立善福寺公園・井草八幡などの自然生態系の破壊や青梅街道のけやき並木の伐採など、深刻な自然環境の破壊をもたらす恐れがあります。それらの被害は、練馬区側・杉並区側双方にまたがるものです。
以上、外環青梅街道インターがもたらす地域住民に対する影響7点をあげましたが、そうまでして実現しなければならない高い公益性は青梅街道インターには存在しない。
(5)こうした状況のもとで、いまだ行政と町会との「話し合い」は中途のままである
地元町会と国土交通省・東京都・練馬区は、ここ数年にわたり、「青梅街道インターチェンジ周辺地域の話し合い」を行ってきました。先ほど述べた、「地域課題検討会」が青梅街道インター周辺地域では開かれることがないまま「対応の方針」が2009年に出されたという状況をふまえ、志村練馬区長の提案で練馬区が仲介役となり、青梅街道インター周辺地域住民と国土交通省・東京都との間で「青梅街道インターを設置する場合と設置しない場合の効果と影響」を話し合う場として設定されたものでした。
しかし練馬区は、9回目の話し合いを迎えた時に突然、9回目の話し合いをもって終了として「まとめ」とする意向を示しました。これに対しては町会として抗議し、今なお行政と町会が合意しての「まとめ」は完了しないままでいます。そして町会は「話し合い」の再開・継続を求めています。
こうした中での大深度地下の使用認可申請を認めることはできません。
(6)インター計画に、地元住民は過去も現在も一貫して強く反対している
2006年2月 元関町一丁目町会での青梅街道インターに関するアンケート調査では、「インターは不必要」が90.68%(回収枚数859枚 回収世帯462世帯)。元関町一丁目町会が呼びかけた「青梅街道インターと地上部街路に反対する署名」は1万5143筆に至っています。
さらに、2006年7月18日 外環「都市計画変更案」および「環境影響評価」に対して住民側「青梅街道インター反対」趣旨の意見書908通を提出(元関町一丁目町会内512、隣の石神井町会内197)。なお、上石神井団地や杉並区からの集約を加えると、1500通。国土交通省が集約した2483通のうち、3分の1以上が青梅街道インター反対の意見を表明したことになります。
昨年8月の道路区域決定を受けて昨年11月に開始された青梅街道インター地域での測量に対して町会は「認められない」と決議し、青梅街道インターに反対する「地権者の会」が作られ、地権者及び隣接地住民が測量を拒否しているため、町会内での測量はほとんど進行していない。幅杭設置は今もって行うことができない状況にある。
このような住民無視の外環計画は即刻中止するべきです。
(7)最後に、外環青梅街道インターに反対する住民の意思を改めて示しておきたい
以上のような不合理極まりない住民無視のインター計画に対しては、地権者及び地域住民は町会のもとに団結し、身体を張ってでも反対する意思を固めています。測量と測量立会を拒否する住民は拡大しています。
この点に関して、この測量をめぐる国交省の対応のひどさ・約束違反に強く抗議します。
国交省は道路区域決定をしたら、まず幅杭打設をして道路幅を決定し、その後個々の測量に入ると常々説明してきた。そして、外環国道事務所大畑課長の昨年10月28日の町会への説明では「今回は計画線内にすっぽりかかっているところの測量のみ」と言っていました。ところが、実際には計画線にまたがるファミレス「華屋与兵衛」などでの測量を行うという約束違反を行いました。その際に国道事務所職員は「幅杭は、いっぺんに打つのではなく、了承を受けたところから打っていく」と言っていました。また、大畑課長は「町会にきちんと説明していく」と言いながら、いざ住民の測量立会拒否にあうと、「なぜ協力しないのか」と傲慢不遜にも町会長に電話をかけてきました。絶対に許されません。また、「現在測量は何軒実施されているのか」との町会からの文書での質問に対しても全くアバウトで不誠実な回答しかしようとしません。いくら反対していようと、町会は住民の生活に責任をもっているのです。それに対して行政がきちんと答えない。こんな理不尽な態度が許されるのでしょうか。
以上のような、住民の反対と抵抗を無視した測量強行と不埒な態度は、住民の怒りに火を注ぐばかりです。この場を借りて怒りをもって弾劾し糾弾するものです。
こうした不合理な計画を押しつける国交省の姿勢は、2004年10月の「PI外環沿線協議会2年間のとりまとめ」の中での「国と東京都は、昭和41年の都市計画決定には、反省すべき点があり、住民に大変な迷惑をかけていることに遺憾の意を表明した。この反省に立ち、今後とも、地域住民が十分に満足できる対応を心がける」との確認事項を完全に無視したものです。
国交省及び東京都は2020年東京オリンピックまでに外環道を完成させたいと思っているに違いないが、このようなことを繰り返すならば、絶対に青梅街道インターは建設できず、したがって外環道は完成しないということを宣言しておきます。
以上、地権者としての強い意志を込め、大深度地下の使用認可に強く反対する意見表明とします。
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