大深度地下使用認可申請に関する公聴会2014/02/23・24
公述人 西村 まり 武蔵野市
外かく環状道路への大深度法の使用許可に係わる公聴会での公述 2014.2.23
私は武蔵野市の東部の三つのコミュニティセンター(吉祥寺東コミュニティセンター、本宿コミュニティセンター、吉祥寺南町コミュニティセンター)のネットワークの活動である「むさしの地区外環問題協議会」の事務局のメンバーですが、今日は、西村個人として意見を述べさせていただきます。武蔵野市吉祥寺の住民が、この50年近い年月をどんな思いで過ごしてきたか、知っていただきたいと思います。
私は吉祥寺南町で生まれ、育ち、3人の子どもたちを育て、いま、この地で最後のときを迎えようとしています。吉祥寺南町は私のふるさとであり、私の子どもたちにとってもかけがいのないふるさとです。48年前に、ここに計画された高速道路の外環は、道路幅14メートルの井の頭通りの3倍近い道路であり、私たち地元民が受け入れることができるものではありませんでした。外環計画予定地は50年前も、現在も緑豊かな恵まれた住宅地なのです。 地元の大反対によって、根本建設大臣のときに外環道路計画は凍結され、住民は外環のことはほとんど忘れて暮らしていました。それが石原都知事、続いて扇建設大臣の視察をきっかけに、動き始めました。私は転勤族で、武蔵野市から出たり入ったりしていたので、本格的に外環に関わるようになったのはこの頃からです。 石原都知事が来たときのことも、扇大臣が来た時のこともよく覚えています。
これは新聞やテレビでも報道されたことですが、石原さんは「ここに高速道路を造ることは、茶の間にずかずか土足で踏み込むようなものだ。」と話されました。扇さんも、公園に集まっていた子ども連れの母親たちに、「長い間迷惑をかけたけれど、もう迷惑はかけません、あなたたち、もう安心していいわよ。」と言ったのです。その後、高架で計画されていた高速道路の外環は、地下構造で建設する方向に行き、地元住民はほっとしました。石原さん、扇さんが吉祥寺に見えたときには、外環は地下にもぐり、地上はそのままの状態で残ると、お二人も私たちも思い込んでいました。
そこに、地下案の中で大深度地下が出てきました。私たちはこの最新の技術による工法について勉強を始めました。
環境面、特に地下水への影響、地盤沈下、排気ガスによる大気汚染など多方面にわたり学習会を開催しました。毎年数回の学習会を重ね、現在は第47回になっています。
特に、地下水のことは、吉祥寺の開発によると見られる井の頭池の水不足の問題を見聞きしていたので、大深度地下をトンネルが通ることでどのような影響が出るか心配でした。未知の世界だっただけに、学習を重ねるほどに不安は増すばかりでしたが、国交省が開催したオープンハウス、説明会では「地下水に影響は無い」と言うだけで、納得のいくご説明はいただけませんでした。
説明会やオープンハウスの開催について、私たち武蔵野市民は強い不満を持っています。杉並区と武蔵野市は共に大深度地下を高速道路が走るだけで、インターチェンジもジャンクションもないからでしょうか、二つまとめて説明会やオープンハウスを開催されてきました。1回おきに、会場は武蔵野市内になったり、杉並区内になったりするのです。一番ひどかったのは、この1月23日に開催された「大深度法申請に関する」オープンハウスでした。チラシのどこを探しても武蔵野市内の会場はなく、私たちはこれまでの経験から、武蔵野市の住民も西荻地域区民センターに行けということだろうと推測しましたが、特に外環に関心が強くない武蔵野市民が、「武蔵野市は開催しないの?」と聞いてくることはあっても、西荻窪の桃井第4小学校の近くのオープンハウスが、武蔵野市民対象だとは気がつかないでしょう。正直言って、腹が立ちました。前回、武蔵野市での開催がなかったときにも、武蔵野市でも開催してほしいと要望しました。この時は武蔵野市と杉並区の境にある松庵小学校が会場だったので、まだわかりやすかったのです。しかもオープンハウスの開催時間が16時〜20時の4時間だけなのです。どうせするならば、せめて1日(10時〜20時とか13時〜21時)開催してほしいと思いました。これもたびたび申し上げました。
説明会も同じことです。杉並区と武蔵野市と合同(?)の開催で、杉並区民は武蔵野市の本宿小学校まで、来なければならなかったのです。開催時間も1時間30分で、そのうち1時間をスライドを使った説明に使うので、質疑や意見を言う時間は本当に少ないのです。
なぜ、せっかくオープンハウスや説明会を開催するのに、このようなお座なりのことをするのでしょうか、理解できません。説明会でも手を上げている人が何人もいても、会は打ち切られます。これでは形だけの開催で、本当に住民の声を聴くつもりなんかないのではないかと思いたくなります。これだけ大きな事業をすると言うのに、説明責任を果たさない国の姿勢は改めていただきたいと思います。
地下水の学習会の開催にはいろいろな苦労がありました。大学の研究者、土木学会などの先生方は、住民の学習会の講師にはなってくださらないのです。何人もの先生方に連絡を取りましたが、お目にかかる場合でも、目立たないところで、秘かに会うことになります。皆さんはご存知でしたか。おわかりになりますか。大学の先生が住民主催の講演会で話をしたり、住民側の意見書を書いたりすると、仕事に影響が出るそうです。審議会の委員などを頼まれなくなるし、ゼミの学生の就職にもさしつかえるとのことでした。今でもそうなのでしょうか。信じられません。それでも、講師を引き受けてくださる何人かの先生方とめぐり会い、何度か地下水の学習会を開催しました。講師を断られた方を含め、この間、ご意見を伺った専門家の先生方は、「必ず影響が出る」から、「影響が出ると懸念される」まで差はありましたが、「影響は無い」と話された方は一人もいらっしゃいませんでした。
今は亡き岡並木先生が、人間はおごってはいけない、地球の中をいじってはいけないと話されたことが強く印象に残っています。地下のことは本当はわからないのかもしれません。絶対に影響はないと言えないのと同様に、絶対に影響があるともいえないのかもしれません。武蔵野台地の地下の水がめといってよい関東ローム層の豊富な水資源が、影響を受けるのではないかという不安はぬぐえません。私たちのふるさとのランドマークである井の頭公園の池がどうなるか不安なのです。
工事中、完成後に備えて、地下水のモニタリングを今から継続的に行い、記録を残してほしいという要望については、現在、一部実行していただけているのではないかと思います。しかし、完成後の調査について質問すると、1年後の観測だけだと言われました。地下水への影響はすぐに出るものではないらしく、4、5年後に影響が出てくることもあるときいています。私たちは10年単位での継続的な観測を願っています。仮に、外環が大深度で完成したとして、その後に続く他の大深度工法の工事のことを考えれば、せめて、参考資料として、できるだけデータを残してほしいと思います。これもご返事をいただいていません。
地下水への影響と同時に、工事中を含めて地盤沈下の心配もありました。
また、大気汚染についても、16キロメートルのトンネルを走る自動車の排気ガスが3箇所、5本の排気所から集中的に大気中に放出される場合の、排気所近くの住民への影響を心配する声に対して、技術的に最新のフィルターで、有害物質を除去するという説明だけで、住民が安心するはずはありません。もっと丁寧に、知識がない住民が納得できる説明をしてほしいのです。今のうちから、武蔵野市の中でも、大気中の汚染物質を定期的に観測して、データとして残しておいてほしいという要望に対しては、ご回答をいただけませんでした。
高架が地下になることで、住民の生活への影響は無くなると一度はほっとしましたが、勉強すればするほど不安が増してきたのでした。
そこへ持ってきて、大深度地下の高速道路のほかに、東京都が地上部にも自動車道路、「外環の2」をつくると言う話が出てきました。石原さんや扇さんのあのセリフは何だったのでしょうか。高架の高速を地下に持っていくときの理由は、コミュニティの分断をしない、環境への影響を少なくする、立ち退き家屋の数を減らす、経費節減などでした。国からそのようなご説明をいただいていましたが、それは何だったのでしょうか。もし大深度地下方式で高速道路を造ろうとするならば、国はまず、国の責任で、地上部はいじらないことを保障する必要があります。それをしないで、大深度地下工事をすることは許されないのではないでしょうか。
我が家にはダンボールに10箱以上の外環の資料がたまりました。「むさしの地区外環問題協議会」がスタートしてからも7年目に入ります。その間、市民は悪戦苦闘してきました。
考えてみれば、外環道路が計画されたのは50年近く前のことです。その頃反対運動をしていた方たちの息子さん、娘さんが、すでに高齢者になっています。このような道路計画そのものがおかしいとお思いになりませんか。一定年数(たとえば20年、30年)手をつけなかった道路計画は白紙にすることを検討してください。そういう法律を作ってください。
おかしなことはもう一つあります。今日ここで、大深度の認可処分をする方々が公述を聞いてくださっているわけですが、大深度地下使用の認可申請が国土交通大臣の名で出され、認可処分も同じ国交大臣の名でなされるというのはおかしいと思います。認可されないことはありえないのではないですか。大深度法そのものの欠陥かどうかは私のような法律の素人にはよくわかりませんが、おかしいと気がついたら、大深度法を改正するか、または救済処置(救済の制度)を作るべきではないでしょうか。今回の大深度地下使用申請を審査するのはどなたなのですか。疑問は大きくなるばかりです。
大深度法の問題は他にもあります。事故があった場合の補償を請求できる期間を1年間にしていますが、これも疑問です。
外環のために作った法律だと言われている大深度法ですが、地下40メートル以下は所有権が及ばないという、強引とも言える法律を作って進めることも大きな疑問です。
これまで、長期にわたって不利益をこうむってきた計画地の上に住む住民に対して、何の補償もない法律でもあります。
計画地の上に住んでいる私の友人は、大深度地下トンネルが家の下を通ることになったら、確実に資産価値は下がる。固定資産税をゼロにしてほしいくらいだといっていました。 その気持ちはよくわかります。
安全面についても、住民が納得いく説明はしていただけていません。交通事故があった場合は、300メートルおきに作られる、隣のトンネルに通じる横道から脱出することができると説明されました。運よく隣のトンネルに行けたとして、それからどうすればよいのでしょうか。地上への出口はジャンクション、インターチェンジがあるところだけです。そこまでの何キロかを歩いて行くということでしょうか。子どもや老人や障害者はどうすればよいのでしょうか。隣のトンネルに無事に行ったら、そこでじっと待っていれば助けが来ると説明してくださった方もありましたが、その言葉を信じるほど楽天的にはなれません。安全策について、もっと丁寧に説明してほしいです。
地下は地震にも強いと説明されています。確かに地中の円筒型のトンネル部分は地震に強いことが期待されます。でも、ジャンクション、インターチェンジ、排気所などのトンネルの出入り口の強度はどうなのでしょうか。心配は尽きません。
大深度トンネルは100年もつとのことです。少なくとも5,60年先までは使用する計画とききました。メンテナンスを十分にして60年たった後はどうなるのでしょうか。廃線になったあとは、埋めるのでしょうか。
もし、大深度の外環本線が貫通しても、私は利用しないと思います。特に孫を連れては絶対に通りません。そんなことを言いたくなる道は造らないでほしいのです。
高架の高速道路が地下になることで、ほっとしていた私でしたが、学べば学ぶほど、考えれば考えるほど、大深度地下の高速道路に疑問を持たざるを得ません。
このままでは、大深度地下の高速道路に反対するしかありません。
日本で始めて、世界でも初めてという16キロの大深度トンネルの高速道路を造る以上、関係住民に納得できる説明をすることが必要であったし、これからもそのことを肝に銘じてほしいと思います。
最後に、大深度法による外環本線の建設に反対する理由として、予算を使う優先順位について述べたいと思います。私の価値観からすると、大深度地下のシールド工法により、巨額の建設費が見込まれる外環よりも、概成道路の建設や、修理が急務な首都高速を優先すべきだと思います。武蔵野市で言えば、吉祥寺通り、女子大通り、五日市街道などです。そのことで結果として交通問題も改善されると思います。東日本大震災の被災者の救済、福島原発の安全な廃炉は外環建設に優先すると、私は思います。私たち納税者は税金の使いみちについて関心を持ち、もっと発言するべきだということも、外環問題を通じて学びました。
以上さまざまな理由から、私個人は大深度による外環本線の建設に反対いたします。今の状態のままで、国土交通大臣が認可することがないように要望いたします。
道=道路はまちづくりの中でとても大きな働きをします。道1本で、町の表情、機能が変化してしまうこともあります。吉祥寺南町コミュニティセンターには「道を考える会」という部会があります。道からまちづくりを考えるということで活動しています。私たちのまちを守るのは私たちだという気概を持って、これからも活動を続けたいと思っています。ありがとうございました。
西村 まり |
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